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   結論から言うと、この魔獣に襲われるイベントで私は死なない。幼馴染のロベルトが私を救おうと、魔術の力を覚醒させる。  ロベルト()の瞳の色が紫に光って、身体からキラキラした光が溢れていく──  私の名前はアリア、七歳。  たった今、前世の記憶を取り戻した。前世の私は、日本という国に生まれ育った普通の大学生。大学に向かう途中、交通事故に遭い、短い人生を儚く終えた。  幼馴染のロベルトは、前世でプレイした乙女ゲーム『闇に浮かぶ星空☆あなたを救うから』通称『闇星☆』の攻略対象者。  この『闇星☆』の最大の特徴は、攻略対象者の全員が何かしら女性から受けたトラウマを抱えているということ。闇星☆にヒロインを邪魔する悪役令嬢は出てこないので、トラウマを与えた女性を悪役令嬢と呼んでいる。悪役令嬢というパワーワードを使いたい運営側の都合だと思う。だって、アリアは、完璧なる平民だから。  攻略対象者をヒロインが慰めたり、励ましたり、時に叱ってあげながら好感度を少しずつ上げていく。そして、愛の力でトラウマを克服した攻略対象者たちと魔王を一緒に倒すという乙女ゲーム。  闇星☆には、ヒロインと距離を縮めていく学園編、両想いになって卒業間際に向かう魔王討伐編が用意されている。私の推しは、たった今、目の前で覚醒した天才魔術師のロベルト様。過去のトラウマから魔力の宿る左眼を眼帯で隠しているキャラだ。  推しのいる乙女ゲームの世界。『闇に浮かぶ星空☆あなたを救うから』に転生したのは純粋に嬉しい。スチルで一瞬しか見ることのできなかった推しのロベルト様の幼い頃を見れるなんて美味しいのに、どうして、どうして──  ロベルト様(攻略対象者)にトラウマを植え付けた幼馴染の悪役令嬢(アリア)に転生しちゃったの──!
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