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目覚めたら自分のベッドに寝ていた。
「アリア……っ! 気づいてよかった……っ」
ベッドの横にロベルト様が座って、私の手を握っている。えっ、えっ、ええっ? ファンサですか? 推しからのファンサですか? と鼻血が出そうになりつつ、思い出した。
乙女ゲームの本物のアリアは、魔獣に襲われたショックでロベルト様に酷い言葉をかけてしまう。更に、瞳の色が片目だけ紫になったことが気味悪くて、命の恩人のロベルト様を無視し続ける。
ばかなの……?
ねえ、アリアはバカなの?
命の恩人のロベルト様にお礼も言わないで、罵倒して、無視して、冷たくして、どんな宝石よりも綺麗な瞳を気味悪がるなんて、どうかしているとしか思えない。
そこまで考えて、ハッと気づいた。アリアがトラウマを植え付けたなら、アリアが酷いことを言わなければ、ロベルト様にトラウマなんて存在しないのでは……?
なんてことなの?!
転生の神様、このタイミングで記憶を取り戻させてくれて、ありがとう。即行、感謝の祈りを捧げた。シナリオ通りではなくなるし、眼帯のロベルト様は見れなくなるけど、推しのロベルト様にひどいことなんて言えない。無理無理。そんなこという口なら縫いつけて一生話せないほうがマシだと思う。
「アリア……?」
なにも話さないでいたら、ロベルト様が不安そうに見つめている。揺れる紫の瞳。はあ、尊いです。
「あっ、あの、ロベルト様、助けてくれてありがとうございます」
「な、なんで、様なの……? アリアも、ぼ、ぼくのひとみが怖いの……?」
ぐすぐすと泣き始めてしまったロベルト様に、胸のきゅんきゅんが止まらない。推しの涙、可愛すぎる。ガラス瓶に集めて飾りたい。
「ロベルトは怖くないよ。あのね、すごく格好よかった。助けてくれて、ありがとう──紫色の瞳、綺麗だね」
「ほ、本当……?」
「うん。ロベルトの瞳、宝石みたい。ずっと見ていたくなるよ」
「うれしい……アリアにきらわれたら、ぼく、ぼく……」
ぐすんぐすん泣いちゃうロベルト様、なんてきゃわわ。頭をなでなでして慰めた。幼馴染、最高。
「あのね、ぼくもアリアの水色の瞳が好きだよ。これからも、ずっと見ていたいな」
あれ? この台詞ってヒロインの好感度MAXになったときに言われる台詞だったような気がする。悪役令嬢と攻略対象者の溺愛ルートなんてなかったはずだよね……?
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