5

1/1

33人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

5

 ◇  天才舐めてました。夏休みに戻ってきたロベルト様に、転移魔術を覚えたから田舎と王都の学園寮を繋いだとあっさり告げられて、くらくら眩暈がする。流石天才! 推しのチートが絶好調すぎて感謝の祈りを! 「いらっしゃいませ! あっ、ロベルト。おはよう」 「アリア、おはよう」  毎朝、私の働くパン屋にやってきてランチのパンを買っていく。ヒロインの手作り弁当で仲を深めたような気がするんだけど、ロベルトルートじゃないのかな?  「ロベルト、他の子から差し入れとかないの?」 「アリア以外の作ったものなんて気持ち悪くて食べないよ。ベーコンエピとハムチーズサンドイッチを全部頂戴」 「うう、どうして私の作ったパンが直ぐに分かるんだろう? やっぱり見た目が師匠と違うのかなあ。ああ、師匠に追いつきたい。でも、今日は自信があったのに……あと、お腹壊しちゃうから全部はだめだよ。三個までね?」 「アリアの作ったものは、ぼくが全部食べたいのに。仕方ないから三個ずつで我慢するね。あと、ぼくがアリアのパンを間違えるわけないでしょう」  パンを袋に詰め終わると、行ってらっしゃいとお店の外で手を振った。 「いってらっしゃい、ロベルト。気をつけてね」 「行きたくない。アリアの働くところ、ずっと見ていたらだめ?」 「私だってロベルトが学園で頑張ってるところ、ずっと見ていたいのに働いてるんだよ! そんなのずるいからだめ!」  発酵するパンみたいに頬を、ぷう、と膨らませる。ロベルトの両手で嬉しそうにガス抜きされた。ぷしゅう。お茶目な推しも可愛い。あっ、パン屋の師匠、店の窓からにやにや覗かないでください。覗きダメ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加