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 ◇  後方支援のロベルト様は、毎朝パン屋でパンを買って、転移魔術で魔術省に出かける。休日は殆どなくて毎日同じように出勤していた。魔王討伐はあまり上手く行っていないと戦況が伝えられて、予定通り結婚式を挙げていいのかと悩んでしまう。 「ロベルト、パンの差し入れって迷惑になっちゃう?」  エリート魔術省の方たちに田舎のパンなんて迷惑かな? それでも休みなく魔王討伐に尽力している人になにかしたくて聞いてみる。 「アリアの作ったパンは世界一美味しいけど、アリアのパンは僕のために作ってほしいなあ……だめ?」  きゅうんと見つめられる。駄目だ、この子犬わんこ顔に私は弱い。しかも眼帯付きだから、なんかもう属性攻撃がやば、やばい。とろりと潤んだ瞳で見つめるとか、顔が熱くて、本当だめ。 「真っ赤でかわいー。はあ、はやく結婚したい。はやく食べたい。アリア以外要らないから、魔王騒動中にさっさと結婚してくだらない縁談をねじ伏せようと思ってたんだけど。そっかあ、優しいアリアは魔王がいると、結婚するの後ろめたく感じちゃうのか。それなら直ぐに魔王を排除するかなー」 「ごめん、ロベルト。早口過ぎて、全然聞き取れなかった」 「なんでもないよ、ただのひとりごと。アリアが作ってないパンなら差し入れしてもいいよ。ここのパン、美味しいからみんな喜ぶと思うよ」 「わっ、本当? 師匠に言ったら喜ぶよ! じゃあ、おすすめを詰めるね!」  師匠のパンを褒められて、ウキウキしながらパンを沢山詰めてロベルト様に渡した。それから数日後。 「魔王討伐、終わったよ」 「えっ?!」  朝のパン屋で、なんでもないように告げられた。昨日の夜に決着が着いたらしい。驚きすぎて、ぽかんとロベルト様を見つめた。 「かーわいー。このまま押し倒したい。かわいいかわいいアリア。この村でアリアに邪な考えを持つ奴はいないように徹底的に排除と牽制をしたからパン屋で働くの許してるけど誰の目にも触れさせたくない。かわいいかわいい今すぐ食べたい。あと少しの辛抱だけどもう限界すぎてやばいな」 「あ……ごめん。ロベルト、思考停止してたみたい。なんか言ってた?」 「ううん、大丈夫だよ。結婚式、楽しみだね」  大きく頷いた。ロベルト様のタキシード姿、楽しみすぎる。何色でも似合いそうで想像するだけで鼻血が出そう。
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