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白昼夢
クロエは目の前に横たわる青年を呆然と見ていた。
美しい少し長めの金糸の髪は青年の頬にかかり、黒い影を落としている。
顔色は青白く、生気というものが感じられない。
そして蒼天の空色である煌めく瞳は、もうその姿を現わすことはないだろう。
「フレッドお兄様……嘘……嘘よ……」
ついこの間まで言葉を交わし、優しい微笑みを向けてくれていたフレッドの命が潰えてしまったという事実を受け止めることができない。
「お兄様!起きて!目を開けてください」
横たわっているベッドに駆け寄り、フレッドの手を握ると、ひんやりと冷たくなっていた。
死んでいる……突きつけられた現実に心が張り裂けそうだった。
一筋の涙がクロエの頬を伝った。それを皮切りに堰を切ったように涙が溢れて、クロエはフレッドに縋りついて泣いた。
また自分は失うのだろうか。
愛する人を助けることなく、ただ死んでいく姿を見つめるしかないのだろうか。
フレッドの胸に顔をうずめて泣いていると、不意に頭上から声を掛けられた。
「クロエ……」
そこには、クロエが見たことのない異国の服を纏った青年が立っていた。
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