柊丈一郎の経験

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柊丈一郎の経験

 半年前に日本で麻薬に取り憑かれた男が街中で騒ぎを起こしていた。男は女に襲いかかっていた。  高純度の麻薬を大量に摂取して男は狂っていた。その男が捕まると面倒なことになると察した俺は、男を拘束すると路地裏に連れ込んだ。  麻薬の出所が警察に露見するとまずい。男が接種した麻薬は俺の雇い主の五十嵐が巷に流した物だった。  俺は口を封じるために男を深い海の底に沈めた。世間で騒がれないように五十嵐に伝えておいた。五十嵐の権力があればそれぐらいは容易いことだった。  襲われていた女が俺に名前と連絡先を聞いてきた。女は伊藤明美と名乗っていた。俺は伊藤に興味はなかったが俺のことを教えた。  それは俺がこの裏世界で生き残るために培った経験だった。この世界では何が起こるかわからない。だから恩を着せることができる時はそれを絶対に逃してはいけない。  俺は世間において善人でなくてはならない。正義感から伊藤を助けたと思われた方が日本において動きやすくなる。麻薬王の手先だと絶対に露見してはいけない。  俺は五十嵐の元で法律に触れることを数えきれないほどしたが、絶対に表に出ないようにしてきた。俺は常に善人という仮面を被っていた。  半年前に起こった事件は五十嵐のおかげで表に出ることはなかった。伊藤も警察には通報しなかった。  豪雨が止むと俺は日本に帰国することになる。五十嵐から言われた通り、まだ見ぬ影山を絶対に殺してやる。
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