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まさしくその通りである。朔弦は首肯した。
敬眞王妃が廃されたあとには、当時側室であった現在の太后・張玲茗が王妃の座に就いた。
先王の時代は正妃が何度も入れ替わり、王室が不安定であったのだ。
「まさか────」
悠景はひとつの残酷な結論を導き出す。
太后が陰謀を企て、敬眞王妃を陥れたのではないだろうか。
王妃の座を我がものにするために。
「あくまで噂です」
朔弦は改めてそう強調したが、もはや結果が物語っていると言ってもいい。
「だが、火のないところに煙は立たんと言うだろ」
実際、敬眞王妃は亡くなり、玲茗はいまなお高い地位に就いている。
また、玲茗には動機があった。
それが彼女の根底に渦巻く欲深さだ。権力、王の寵愛、当然それらを欲しただろう。
だが、子に恵まれなかった。息子はおろか娘すらも。
後宮でそれが何を意味するか、恐らく玲茗が一番よく分かっていただろう。
だからこそ、敬眞王妃に嫉妬していた可能性は大いにある。
「……敬眞王妃さまは本当に太子さまの殺害を画策してたのか?」
呟くように悠景が尋ねる。
記憶の限りでは、敬眞王妃はそのような人物ではなかったはずだ。
敬眞王妃のさらに先代の妃であった恭仁王妃が亡くなったとき、王妃の座を打診されたのは敬眞王妃であった。
その際にも、かなり渋っていたと聞く。
「……いいえ、恐らく濡れ衣でしょう」
朔弦は答える。
「ですが不幸なことに、敬眞王妃にもまた太子さまを殺める動機として十分なものがあった」
当時の太子は敬眞王妃の子である現王ではなく、恭仁王妃の実子であった。
敬眞王妃が王妃の座に就くのを渋っていたのは、自分が王妃となれば太子の地位が脅かされる、と思ったためだろう。
恭仁王妃は元来病弱で身体が弱く、出産後ほどなくして亡くなった。
空位となった王妃の座を欲した太后が敬眞王妃を陥れ、強引に奪ったというのが朔弦の考えだ。
敬眞王妃が太子を殺める動機に値するもの────それを利用して。
悠景は眉を寄せ、難しい顔をした。
「何だ? その動機ってのは」
「……自分の子を王にすること」
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