ある小説家の苦悩

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「いやー、アリサ先生の書かれる作品は素晴らしい! うまく流行に乗っていますから」  それもそのはずだ。SFでは「宇宙人が攻めてくる」「タイムトラベルして過去の自分と出会う」などを書けば流行から外れることはない。テンプレから外れて駄作を書いてしまうと、今後の作家生命に関わる。 「アリサ先生、申し訳ないがご相談がありまして。実はこのところ出版社はどこも経営が苦しくて……。我が社も先生への原稿料を下げざるをえないのです」  その話はいろいろな会社から打診されていたから、アリサは承諾した。  編集者は「しかし、なぜ本の売れ行きが伸び悩んでいるのか、まったくもって分かりませんな」とため息をついた。
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