BLACK

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初めて彼を見たのは、満員に近い電車の中で 高齢の女性に席を譲り、リードしてあげていたとき。 それが、自分の通う高校で、黒王子と呼ばれているくらい有名だった1学年下の男だと知ったのは、その光景を見てしばらくしたあとだった。 どうして黒王子なのか。 顔は、客観的に見て、上の下くらいだろうか。その見た目に加え、クールとか、腹黒とか、そういったイメージはないようだが、彼の名前と、似合う雰囲気のカラーが黒、ということから、黒王子、らしい。 新入生が高校に入学してから、もう3ヶ月は過ぎたというのに、彼の存在を知ったのは最近だったし、まさか、あんな関係になるなんて、まったく予想できなかった。 夏服になり、本格的な暑さを感じるようになったきた7月過ぎ、わたしはいつもと同じ時間に電車に乗って登校する。 自宅の最寄り駅から学校のそれまで、5駅。 2駅を通り過ぎると、黒王子が乗ってくる。 この時間帯に同じ学校の生徒が乗ってこないことはないが、元から彼は遠巻きに好意を寄せられているケースが多いようで、わたしが彼を気にして見るようになってからは、声をかけられているところはほとんど目撃したことはない。 しかしながら、特段わたしに対しても友好的に話しかけてくるということはないが、わたしとふたりきりになったとき、彼は饒舌になる。
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