3日目

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「戻って……来たね?」 ……もう体は思うように動いてくれない。 雪の幽体ももう限界のようだ。 「じゃあ……あとは任せた……よ……」  そう言って雪は静かに消えていった。 これが命の重さ 改めて実感する。 2日間の全てを使い走り回った。 今までで一番体を酷使しただろう。 祠は目の前なのに……入れるほど体力はない。 ……外を晴れにしないと。 私は重い祠の扉を放った。 そこは楽園と呼ぶに相応しい場所だった。 天から差す陽光、小鳥のさえずり、歌う草花……まるで誰かの箱庭だ。 だが、人の住む形跡は無く。文明の跡地のようである。 心地よい。 それが咄嗟に出てくる感想だった。 遺跡のようなものに近づく。 恐らく触れるそれは祠だ。 祠の前には1輪の花が鎮座しており、周囲には小さな花々が散りばめられている。 私は生憎、花に詳しくないためなんの花か見当もつかない。 分かるのは美しいということだけ。 私は祠の前に祈りを捧げる。 あとは気を失うまで祈り続けるだけ。 これで村の人達は平穏に暮らせるということだ。 「雪兄ちゃん……あとは任せてね」 私は静かな眠りに落ちた。 尚、祠の裏側にはこう記されていた 『憐れなる儀式の子。その命朽ち果てるまで祈りを捧げよ。して、朽ちた命を10年間この祠にとどまらせ、次の儀式の子を導きなさい。さすれば、永遠なる祝福を与えん』
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