3日目

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人生で一番走ったかもしれない。 そりゃ80分も走ったらそうなる。 雪は本当に人間なのか……? 「ほら、早く石碑読んで!」 「よめ…ないよ……」 息切れがひどく呼吸することで手一杯だ。 「え〜?」 「雪が……読めば……?」 辛うじて言葉を発する。 相手に通じているかは分からないが。 「いや、でもアウトプットって大事なんだよ?儀式の子なんだかこの石碑の内容は覚えとかないとでしょ……」 「ちょっと待って」 ときが止まる。 やっと雪が情報を吐いてくれた。 「やっぱり……この石碑の情報は……儀式に関わりがあるのね……?」 「……あ」 「それを知ってるってことは……石碑の全ての内容をしってるんじゃないの……?」 「い、いや、初見でもこんなとこにあるなら儀式のものだと思うって」 雪は焦りを顔に出している。 どう見ても挙動がおかしい。 何かを誤魔化しているように思える。 一方、私はやっと息が整ってきた。 「見るからに挙動が怪しいよ?」 「……もう、それはいいから早く読んで」 雪は話題をそらすのが下手らしい。 前にも似たような人にあった気がする。 気のせいだろうか? 私の血縁と重ねているだけだろう……きっと。 「これは伝説に関する石碑……『臆する儀式の子。火より造られし中枢にて祈れ。さすれば繁栄を授けん』」 ……火より造られし中枢?火の真ん中ってこと? それ燃え死んじゃうんだけど……流石に違うか。 じゃあ一体どういう……? 「火より造られし中枢かぁ……」 「よくわかんない。雪ならわかるんじゃないの?」 「だから知らないって。ほら、早く行こう」 何かを覆い隠している。 そんな気がする。 問い詰めたいが雪の表情を見ているとなぜか気が引けた。 ……外の様子が見てみたい。 雨は止んでいるかな。 晴れた空が早く見たいものだ。
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