1日目

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私は息切れする。 1時間走り続けたらそりゃそうなるだろう。 幾度か転んだ結果、足には少し傷ができた。 「……なんで、そんなに疲れてないの?」 「男子と女子だと体力も差が出てくるからね〜……ちょっと休む?」 「う、うん……」 持ってきた水分を口の中に入れる。 体の中に少し潤いが戻り、息切れは落ち着いてきた。 「ねぇ、晴」 何かを言いたげな目をした雪は私の名前を呼んだ。 「何?」 勇気がいるのか、雪は何かを躊躇っている。 何を躊躇う必要があるのか? 「………ううん!なんでもない!」 「なんでよ!そこまで言うなら最後まで言いなさいよ!」 「こ、今度ね!!」 「え〜…?」 不満だ。 こういう気になるところで話しを止める人いるけど言うなら最後まで言って欲しいものだ。 「じゃあさ……晴の趣味ってなに?」 「わ、私の趣味??」 趣味……なんだろう? 歌?絵?料理?散歩?裁縫?……どれもしっくりこない。 「わ……分かんない……」 「……そっか」 「でも、誰かと話してたら安心する」 「…!!」 なぜか雪は酷く驚いたような顔をする。 そしてなぜか笑みを浮かべた。 それはそれは優しい笑み。 雪は奇妙な事が多い。 「じゃあさ、雪の趣味は何?」 「え、僕?…………」 唸り声をあげながら小首をかしげる。 真剣に悩んでいるようだ。 そして雪はようやく口を開いた。 「……誰かを笑顔にすること……だったかな?」  「なんで疑問符?」 「う〜ん……悩んだ挙げ句の回答」 「まぁでも、素敵な趣味ね」 「へへっありがとう」 嬉しそうに雪は満面の笑みを見せた。 照れていると似ている動作かもしれない。 「ふぅ……なんだか、眠くなってきた……」 外はもう真っ暗なのだろうか。 洞窟で寝るのは基本的に危ない。 そのため儀式の子は寝ずに祠へ向かうらしい。 2日間の徹夜はかなりの痛手だ。 「あ〜……もう、夜なのかな?そろそろ寝たら?」 「いや、洞窟は危ないし……寝るなって言われてるから……」  「大丈夫!僕が見張ってるから!洞窟で雑魚寝はきついかもしれないけど、体力はつけとかないとね!」 優しい声で雪は応える。 最早後半は子守唄だった。 雨の音はここまで聞こえる。 それは私の睡眠欲求を加速させている。 私は深い眠りに落ちた……。
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