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「あったよ!石碑だ!」
石碑は走って40分+歩いて1時間ほどのところにあった。
(途中で疲れて歩いてしまった)
でも、先程と大きく形が違う。
さっき見たのはひでばち…?のようなものに刻まれていたがこれは普通の岩にも見える。
「なんでこんなに形が違うんだろう……」
「なんか、さっき見た形のには古より伝われし伝説が描かれていて、この普通の岩みたいなのには歴史が描かれてるらしいよ」
「なるほど……形で区別するのね」
「早速内容を読んでみてよ!」
「んっと……『遥か昔、我らは天より命を授かった。我らは文明の下に栄え、神にしか赦されぬ禁忌に触れた』……これだけ?」
「この先にも何かがあるんだろうね」
どこか遠い目をした少年はどこか儚げな表情だ。
13歳とは到底思えない。
「……なんでこんなに細切れにしてるの?全部同じ碑石に書けばいいのに」
「そうしない理由があるのかもね?」
「あんた管理人でしょ?何か知ってるんじゃないの?」
私は雪を問い詰める。
だが、雪はあっけらかんとした様子だ。
「さぁね?僕は何も知らないよ?まぁ、何事も自分の目で見るのが大切だよね。さぁ、進もう」
子供だからと言って舐めてはいけないようだ。
喰えない男である。
「雪、さっきからスピード早すぎ……ちょっとは合わせようとか思わないわけ?」
ついて行っていいとか聞いておきながら何故先に行こうとするんだ。
「あ、ごめん。1人でいるのに慣れちゃったから……極力合わせるようにするね」
もしかして雪は洞窟の外にあまり出たことがないのか?
1人でずっと洞窟に?
……いや、人間独りでは生きていけない生き物だ。
流石にそんなはずは……?
「どうしたの?晴。ぼーっとしてるよ?」
「え、あぁ!ごめん。気にしないで」
「……分かった」
そんなことより儀式をしないと。
村の人達に怒られる。
先に進んでいこう。
「そういえば、晴は一番の思い出ってある?」
「一番の思い出?」
突拍子もない質問だ。
いきなりで答えるのは至難である。
楽しかったことも苦しかったことも辛かったこともたくさんある。
それが人生だ。
一番の思い出と聞かれれば楽しいことを思わず連想してしまうが、苦しい、辛いという思いも一番の中に入ってくる。
そう考えるとなかなかに難しい質問だ。
「……どういう一番?」
「え?」
「自分のためになった一番の思い出?一番楽しかった思い出?それとも一番苦しかった思い出?それか……」
「あ〜……ごめん、一番しか言ってなかったね……一番心の奥深くに残っている思い出だよ」
なるほど……改めて言われると難しい……強いて言うなら……
「うーん……よく遊んでた人がいたんだけど……その人と遊ぶのが楽しかったな……でも、ある日どっかに行ったきり戻ってこなくなっちゃったの」
「……それが一番の思い出?」
「心に残ったかな……突然大切な人がいなくなるのは」
「……ごめんね、こんな質問して」
「……いいよ」
そこからしばらくは洞窟の雫の音と水を踏む音しか聞こえなかった。
沈黙を裂いたのは私だった
「あ、あれ?」
「あ、本当だ!碑石だね」
「これは……伝説だね」
「読んで読んで!」
「『懐疑抱く儀式の子。あるべきところに力を灯せ。さすれば地に恵みを授けん』」
力?……なんの力だろう……。
「よくわかんない……」
「確かに難しいね……よし、次行こう」
「そうだね」
洞窟の中を歩いていく。
音はよく反響して、まるで別の世界にいるかのように錯覚する。
1分が10分かの如く思える。
そこから2時間ほど無言で歩き続けた
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