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部活が終わった。
今日も、コンクール組は残って練習するみたい。
残念。
でも、かえって都合がよかったかも。
今日は伊織くんに内緒で買い物しようと思っていたから。
「俺、今日、残らないといけないから。じゃあな」
「うん、練習頑張ってね!」
私は帰り支度を始める。
すると、ホルンの早乙女先輩が、伊織くんのところにやってきて、何やら耳打ちをした。
早乙女先輩は美人で憧れの存在。
でも、なんで伊織くんと話しているんだろう。
伊織くんは私の方をチラリと見る。
早乙女先輩も、私の方をチラリと見る。
そして、二人は並んで音楽室を出ていった。
今、なんで私の方を見たの?
二人の雰囲気があやしい。
私が伊織くんのこと好きって、なんとなく知っている部員も多いと思う。
いつも一緒に帰っているから。
でも、私と伊織くんってちゃんと付き合っているわけじゃない。
小学校からの縁でいつも一緒にいるだけ。
だから、伊織くんに彼女ができたとしても仕方のないこと。
いつも伊織くんの優しさに甘えてばかりいた。
何も言わなくても、伊織くんは私のこと、好きでいてくれると思っていた。
けれど……
早乙女先輩、伊織くんのこと好きなのかな?
先輩は選抜組だし、私と同じホルンで金管楽器だから、同じ金管楽器のトロンボーンの伊織くんと仲良くなってもおかしくはない。
選抜組同士で一緒に練習することが多くなったから、それで……
早乙女先輩は私から伊織くんを奪った?
いやいや、伊織くんは私のものってわけじゃないよね。
こんな考え方はよくない。
けれど……
世の中には、好きな人を奪って優越感に浸るような人もいるっていうし……
さっき、早乙女先輩がチラリと私の方を見たのは、伊織くんを自分のものにした優越感を私に示すため?
伊織くんも私の方をチラリと見たけど、どういうつもりで見たんだろう?
俺はこの人と付き合うから、おまえとは一緒にいれない、そんな意味?
え? え?
なんでこんな妄想が出てくるの?
妄想、そう、これは妄想なんだ。
落ち着け私。
ちゃんと伊織くんに告白していなかった私が悪いんだ。
近いうちにちゃんと告白しないと。
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