今は少し虹を待とう

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「喜んでくれたみたいでよかった。早乙女先輩に相談してよかったよ」 「早乙女先輩?」 「あぁ。ホルンパートの先輩なら、梨沙の好きなもの、分かっているだろうから、プレゼント何がいいかな、って相談してたんだ」  そうだったんだ……  私の方をチラリと見たのは、私へのプレゼントの相談をしていたからだったんだ…… 「このプレゼント、できれば雨上がりの時に渡したいな、って思ってて、それで、今日、うまい具合に晴れてホントよかったよ」 「どうして雨上がりに渡したいって思ったの?」 「だってさ、俺達の帰る方向って東じゃん。夕方の雨上がりなら東の空に虹が出るし、虹の下でプレゼントできたら最高だろ?」  伊織くんは照れながらそう言った。  確かに、空には大きな虹がかかっていた。 「雨上がりの虹を見るためには雨が必要なんだ。梨沙、今は辛いだろうけど、雨が上がればきっと虹が見れる。今日のように。だから、これからも練習、頑張ろうな!」  手の中のホルンのキーホルダーが虹色にキラキラと輝いた。 「うん。伊織くん、ありがとう!」  辺りの木々の葉っぱが日差しを浴びて輝いている。  空気は澄み渡り、雨上がりの匂いが漂っている。 「梨沙、来年のコンクールでは一緒に虹を見ような!」 「うん! 私、頑張る!」 「それで……もう一つ、梨沙に言いたいことがあるんだ……」
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