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「梨沙、帰ろう」
「うん、一緒に帰ろ!」
伊織くんは小学生時代からの友達。
一緒にスクールバンドに入って楽器の演奏をしてきた仲だ。
私はホルン。
伊織くんはトロンボーン。
お互い金管楽器だ。
私の家と伊織くんの家とが近いこともあり、一緒にスクールバンドの朝練に行ったり、放課後一緒に帰ったりしているうちに仲良くなった。
小学生の頃は恋愛感情とかに疎くて、伊織くんのことをただの男友達だと思っていた。
けれども、中学に入って制服姿の伊織くんを見ているうちに、背が高くてかっこいいな、体つきもがっちりしていて頼もしいな、なんて思うようになった。
私はだんだん、伊織くんのことを異性として意識するようになっていた。
伊織くんは私のこと、どう思っているのかな。
そのことはあまり考えないようにしてきた。
だって……
伊織くんにその気がなかったら恥ずかしいし……
友達からは、
「梨沙の彼氏、かっこいいよね」
ってよく言われる。
「彼氏じゃないよ~」
って返すんだけど、付き合っているように見られるのは悪い気はしない。
本当の彼氏だったらもっといいんだろうな、とは思う。
クラスは違うけれども部活は一緒だし、帰る道も一緒なので、これはこれで満足している。
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