今は少し虹を待とう

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 テストでは、部長さんと副部長さん、二人が聞いている前でソロ演奏する。  ひええぇぇぇ……  緊張する……  ホルンは、「角笛(つのぶえ)」が進化してできた楽器。  管がくるくるとカタツムリみたいに巻かれていて、丸くてかわいい。  私はホルンが大好き!  この楽器でコンクールに出たい!  絶対に合格しないと。  椅子に座り、右手をベルの中に入れ、左手をレバーの上に乗せる。  ほとんどの金管楽器は右手でピストンを操作するのに、ホルンは左手で演奏する楽器。  私、右利きなんだけどね。  左手を使うと、右脳が刺激されて頭がよくなるよ、なんて言われたこともある。  それが本当なら嬉しいな。  さて、いよいよテスト。  腹式呼吸で大きく吸ってから息を吹き出し、マウスピースの中の唇を振動させる。  コンクールの課題曲の一番難しいところを吹けるかどうかのテストだ。  これまでたくさん練習してきた。  きっと、うまくできるはず。  ふぁおん……  出だしからいきなり音を外してしまった。  動揺しながらも演奏を続ける。  ふぁおん……  しまった。またも音を外してしまった……  副部長さんが言う。 「はい、そこまで」  もうだめ……  真っ青になりながら立ち上がる。 「……ありがとうございました」  一礼して退室する。  意識が遠くなっていく……  まずい!  気を取り直し、なんとか意識を保って部屋を出た。  ふぅ……  よかった。倒れずに済んだ。  入れ替わりに入室する原口さんに、 「頑張ってね」 と声をかけ、私はみんなのいる場所へと戻る。  はぁ……  ダメだろうな……  コンクール、出たかったな……
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