死霊使いの姫君

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死霊使いの姫君

 フィルディ王国の姫君、クローディアには幼い頃から不思議な力あがった。  母は“神々の国”とも言われる隣国、宗教国家エメデュイアの王家の血筋。その娘がなんらかの力を持っていても不思議ではない。  ただその力がなんなのかは、十三歳を迎えなければ分からない。    神々に愛され、奇跡の力を有する者が生まれるエメデュイアの血筋ならば、きっと癒しの奇跡や先見の奇跡、もしかしたら運命を変える奇跡の力の持ち主かもしれない。  少しおっとりした性格のクローディアは、力のこと以外は花のような可愛らしさを持つだけの、いたって普通の女の子に見えたかもしれない。  王室の教育を受けてはいるが、優しく、おおらかで、そしてちょっとだけ抜けているところのある愛嬌のある子供だった。  そしてついに十三歳の誕生日を迎えた日、彼女の力が開花する。  彼女は日頃王墓に悪霊がやたらいることが気になり、追い払うためによくこっそり出入りしていた。  その日も彼女は自分の誕生パーティの途中で嫌なものを見かけ、会場を抜け出すと王宮から続く王墓まで一人でやって来てしまった。  いつものように追い払い、すぐ会場に戻るつもりだった。  だが中にまで入り込んだ悪霊を追いかけるうち、石棺に収まらない放置された棺を見つける。  彼女はなんとその棺の中の死体を呼び覚まし、そのまま主従契約を結んでしまったのだ。    女の声で喋る骸骨に“ジュレ”と名付けると、彼女は早速出来たばかりのお友達(・・・)を連れて会場に戻ってしまった。  あまりにも死者に近い彼女は、それが恐ろしいことと気づかなかったのだ。  当然会場は大混乱。  母は卒倒し、父は頭を抱えた。 「クローディア、お前は子供の頃から不思議な力があった。いつかそれが開花すると思っていたが、まさか死霊術だったとは」 「……悪いことなの?」 「父にも母にも奇跡の力はない。その判断は下せない。だが会場を見なさい」  そう言われ自分のためのパーティ会場を見回す。  逃げた者もいるし、部屋の隅で固まり恐怖の目で見ている者もいる。  兵士は皆武器を構えていた。 「驚かせてしまったのね……」 「そうだ。一般的に死は穢れ。恐ろしいものだ。お前が幼い頃から見えない何かに語り掛ける姿を見て、もっと良いもの……精霊や、天の使いや神々といった神秘の存在と交信しているのかと思っていた」 「……これは悪いこと?」  大人でも子供でもないクローディアはもう一度聞いた。父も同じ答えをする。
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