憑いてきた

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 彼女が目覚めるまで傍にいたいが、やるべきことがある。  彼女を守るためにも警備を見直さねばならないし、数日後に控える王都での披露パレードの警護も信用のおけるもので別途用意する必要が出てきた。  昨日の襲撃の主犯も追わねばならないし、さらに厄介なのがオロール王国の動き。    ルブラードが政治なら、軍にも一人腹心がいる。  カートと言う騎士団の子爵令息で小隊の隊長だが、物静かで目立つことがない。剣の腕だけでなく、目立たないことを利用しての隠密行動が得意。  エルキュールは戦場において、彼の隊ごと私的に動いてもらうことが多かった。  なかなか頭の切れる男で、エルキュール個人への忠誠も厚い。    そのカートに探らせていた、彼の国の動きが新たにありそうだ、と言う報告だ。  今すぐに軍を動かす気配はないが、周辺国に物資の強力等を仰ぐ素振りが見られると言う。エーノルメは国王の政策により敵対と言わずとも心象の良くない国が多いので、あちらに支援を申し出る国はそれなりにいるだろう。  そちらは引き続き探らせつつ、エルキュールは早朝から執務に取り掛かった。   「殿下が私よりも早く仕事をなさるとは珍しいですね」  いつもは何かと彼を執務室へ連行していくルブラードが、今日はエルキュールの後から現れた。  デスクの上には王都の地図と他の書類が散らばっていた。 「と、思いましたがどうやらやって頂きたい内容とは違うようですね。こちらは……披露パレードの計画書ですか」 「昨日の襲撃の主犯が捕まらないまま挑めば、何か起きなくもないと思ってな。当日は俺の用意した護衛にも任に当たってもらいたい」 「昨日の件は信用のおけるものに探らせておりますが、あのタイミングでの襲撃となるとまず城内に情報漏洩をした者がいると思っていいでしょう。クローディア様と遠乗りなさる予定は当日決められたものです。まあ元々政敵だらけの城内ですので、逐一こちらの動向を報告している輩がいても当然かもしれませんが」 「それでも亡き者にしようとする馬鹿がいるとは思わなかった。父上の思惑とも別で動いているようだな。父上は今となっては正直腑抜け(・・・)だ。俺としてはその方が都合がいいが、都合がいいのは俺だけではないようだ。腑抜けを利用して国を裏で牛耳りたいヤツがいるらしい」 「そうなると殿下はかなり邪魔ですからね。ただこちらにも計が漏れたことを考えると、相手も相当焦っているのでは。守りを固める前にどうにかしようとしてくるでしょうね。しかし城下の披露では相手も警備が厳重なのは理解しているはず。強行するなら警備が既に敵の手に落ちているか、金で民衆を使うか……あとは城に刺客を送ると言ったとこでしょうか」  ルブラードは広げた地図を眺めながらそう答えた。  味方の多くないエルキュールは、手薄な部分も多い。  まだ護衛を増やせている状況ではないので、城にいるからと言ってクローディアが安全と言い切れない。
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