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「――昨日はかなり無理をさせてしまった。大丈夫か?」
「あの……大丈夫なの……エルク、いっぱい優しく――」
ここでクローディアはくいくい、とエルキュールの上着を引っ張ると、身を屈めた彼の耳に唇を寄せた。
「――優しくしてくれて、私、とっても幸せだったの」
「ルブラード、部屋を出ろ」
「そうもいきません」
「五分でいい。出ていろ」
「では五分きっかりで戻ります」
バタン、と扉が閉まるや否や、エルキュールはクローディアを抱え熱烈な口づけを始めた。
二人だけになった部屋に水音が響き、クローディアの吐息が漏れる。
昨夜の事を体が思い出し腰が抜けそうになってしまう彼女をそのままソファに運ぶと、背もたれに押し付けるようにして何度も舌を絡ませた。
「んっ……だめなの、また気持ち良くなっちゃう……」
「なればいい、と言いたい所だが五分では無理だな。このスカーフはどうした? 今日はそんなに寒くないが」
クローディアの首にはドレスの色に合わせたスカーフが巻かれていた。
花のような結び目はアクセサリーのようにも見えるが、今日の気温では日中には暑そうだ。
「あの、エルクがいっぱい愛してくれたから、リーユが隠しておきましょうって……」
「どうせ隠れているのなら愛の証を追加させてもらうか」
ニヤりと笑うと、しゅるっと結びを解く。そしてすぐにその肌に吸い付いた。
昨夜散々吸い付いたその肌は、両者に甘美な味をすぐに思い出させた。
「あっ……んぅう……だめぇ……え、えるくの唇、気持ちいいの……」
ちゅぱっと音をたてて首から離れると、そこには新たな赤い印がくっきりと刻まれていた。
コンコンコン
念のためなのかノックが鳴らされる。
エルキュールは「残念、時間だ」と言うとスカーフを簡単に結って戻した。
リーユの複雑な結び目は到底再現できなかった。
戻って来たルブラードがちらっとクローディアに目をやる。
スカーフの結び目が変わっているのと、とても見ていられないような蕩けた表情からすぐに目を逸らすと、エルキュールに「ほどほどに」と一言言った。
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