シャンピー

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「ディア」   「エルク……まさかリーユが妹だったなんて思わなかったの。シャンピー、お兄さん想いのいい妹さんだね。ふふっ……まだシャンピーなんて言ってたら怒られちゃうかな?」 「じゃあ墓にキノコでも供えるか」 「それはリーユに失礼だよ、ふふっ……」  リーユとの話でうっすら目に浮かんだ涙をエルキュールが拭ってやると、そのまま当たり前のように唇を寄せられた。  護衛もいるのだが彼には関係ないようで、椅子に座るクローディアを上向かせ覆いかぶさるように口づけを深めた。  クローディアは護衛の存在を思い出し慌てて彼の厚い胸を押す。 「や、だめ、人前じゃ恥ずかしいの……」 「こういう時は空気と思っていいんだ」 「シッピーもいるの……」 「今の俺に霊を感知することは出来ない」 「だめなの……エルクとキスしてると色んな事がどうでも良くなってきちゃうの……」 「いいじゃないかそれで」  若い護衛は目の前で繰り広げられる甘いやり取りに気まずそうに目を逸らす。  もう一人が軽く咳払いをしたところで、ここぞとばかりにクローディアがエルキュールの胸を押し返すのに成功した。    残念そうにエルキュールが肩をすくめた時、クローディアの表情が急に真面目なものに変わった。  見てるな、あいつ。  二階の窓。  女だ、メイドか?  シッピーはそう言うとふっとどこかへ消えた。   「エルク……二階の窓、メイドがこっちを見ていない?」  クローディアの言葉に、彼はクローディアの髪を撫でつつ素早く視線を走らせた。  東側の二階の部屋に、こちらを伺うような人影がいたが、誰なのかまでは判別できなかった。  すぐに護衛に目配せする。 「二階東側三番目の部屋、女だ。俺たちのことはいい」 「はっ」  護衛がすぐさま部屋へと向かうのを見届けると、エルキュールもクローディアの腕を取り抱きしめた。 「ティータイムは終了だ。少し部屋で大人しくしていてくれるか?」 「うん、リーユと一緒にいるの」 「ではこのまま俺が君を欲しくなってしまった体で戻るか。体ではなく本音でもあるが」 「そ、それはまた、安全な時に、ね?」 「楽しみだ」  そのままクローディアを甘やかすようにじゃれつつ城内に戻ると、新たな護衛を彼女に付けすぐにルブラード、カートの両名と落ち合った。  庭でのお茶会が解散になったことを知ったリーユが部屋でお茶を淹れ直してくれたが、クローディアはどこか不安な面持ちのまま大好きなお菓子にも手を付けられないでいた。  心配するリーユに「大丈夫よ」と言うと、彼女にも椅子に座ってもらった。  お茶を飲んで落ち着きましょうと言われたので、それならリーユも一緒に飲んでとお願いすると、彼女は自分の分を淹れて一口飲み、クッキーをパクっと摘まんだ。  クローディアを和ませてくれようとしたのだろう。
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