予想通りの襲撃と予想外の来客

4/11
前へ
/150ページ
次へ
  「おかしい。市民の割に武器の扱いに長けていないか?」 「ええ、あれは軍で訓練を受けた者の動きですな」  戦局を見ながら例の二人が囁き合う。  この警備なら馬車の二人に危害はないだろうが、馬車近くの警備が突然胸を押さえ倒れた。  白羽が見え、どこからが矢が飛んで来たことが分かった。  老人の方が素早く屋根の上を見る。 「あそこですな」  警備兵と異様な数の武装市民が入り乱れる中、二人は馬車へと近づいた。  僅かな時間観察していて気づいたのだ。  警備は、積極的に馬車を守ろうとする者と、そうでない者がいる。  そして守ろうとする者の数は少ない。    何か仕組まれていることを察した二人は、倒れた武装市民から剣を奪った。  馬車の上では、あの王子が既に倒れた護衛から剣を取り花嫁を守っていた。 「警戒していたつもりでこのザマだ。思ったより反対派は狡猾だったらしい」 「エルク、まだ屋根に沢山隠れてるの!」 「クソ……警備兵があちらの手の者で固められているとはな。騎士団も一部買収されているようだ……ここで言っても仕方ないが!」  そう言う間にも矢はどこからか飛んで来る。  屋根のあちらこちらに潜んでいるらしく、シッピー一人の報告では間に合わなかった。  それに彼は彼で、どうにか物に干渉して少しでもクローディアを守ろうとしてくれている。 「警備! ここはいい、屋根の弓兵を頼む!」  エルキュールは地上は自分とカート、そして文武両道のルブラードでなんとか対処することにして、少ない彼の直属の警備を屋根の弓兵へと回した。 「殿下、クローディア様を連れお逃げ下さい」 「分かっているがこうも混雑した場所では難しい」  地上の警備が少なくなったことで、武装市民が一気に馬車に迫った。  ルブラード、カートが馬車の下で応戦し、エルキュールはクローディアを庇いながら馬車の上で矢と武装市民の両方に対処する。    だが武装市民の一撃を返した時、無常にも剣が折れてしまった。 「もらったぁああ!」  本来クローディアを襲っているはずの武装市民が、エルキュールの命も狙う。  剣の折れた彼は、クローディアを庇い素手で剣を持つ男の腕を受け止めた。 「殿下!」 「数が多すぎる! ここまでエーノルメは腐っていたか!」  その時、クローディアを狙う屋根の弓兵が見えた。 「クローディア様!」  ルブラードが気づくも彼も応戦していて間に合わない。  その彼の前をさっと一つの影が通り過ぎ、クローディアに当たる直前で矢は薙ぎ払われた。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加