死霊使いの姫君

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「その判断は出来ない。だがお前の力を否定はしたくない。多くの人は死も死者も恐れる。それだけは忘れず、その力とどう向き合うかは自分で考えるより他にない」 「……私、みんなを驚かせたり怖がらせるつもりはなかったの。でも彼らとお話しするのも好きなの」 「ならば使う場所、使う時を自分で正しく判断出来るようになりなさい。父は得体の知れない力をお前が使うことに不安を感じるのは否めないが、お前が良いと思うものを止めようとは思わない」  父は娘の恐ろしい力を否定せず、受け入れてくれた。 「ありがとうお父様。ジュレは王墓にいてもらうね……でもお父様、これだけは聞いて欲しいの。あのね、死者が言うにはね、国境の近くでエーノルメ王国の兵士が沢山集められているみたいなの」 「……はぁっ!?」  骸骨騒動から一転、パーティはお開きとなり軍に緊急招集がかけられる一大事となった。  城が大騒動に包まれたその夜、クローディアは部屋で母に優しく諭された。 「クローディア。あなたに奇跡の力が芽生えた事、お祝いするわ。今はもうほとんど奇跡を起こせる者などいないの。それはとても貴重な力かもしれない。でもね。せっかく目覚めた力だけど、人の前で使ってはだめ。お父様の言ったように、死は穢れ、避けられない不浄。だから、それを扱うあなたも、穢れと見なされてしまう」 「はい……気を付けます……」 「でもあなたはその力で国の危機を知らせたの。そこは誇るべきところよ。お父様と私が懸念するのは一つ。あなたにどんな影響があるのか分からなくて怖いのよ。あなたが冥界に攫われないか心配なの」  父も、母もその力を否定はしなかった。  奇跡の力などもう廃れて何百年となる。だから例え彼女にその血が流れていようとも、別に使うことが出来なくても、どちらでもよかった。  ただ死者に関わるとなると、話は変わって来る。  周囲が不気味に思うからと言う理由より、両親は娘が死に近づいてしまうのではと恐れた。 「私、出来るだけ死者とは関わらないようにする」  クローディアは寂しそうにそう言った。  彼女自身は、その一見恐ろしい力を肯定的に捉えているようだった。  そんな彼女のために母はこっそり小さな部屋を用意した。  ジュレのための部屋で、ジュレには他の使用人と同じようにお仕着せを与えた。  ジュレは不思議な雰囲気を醸し出す女だったが、死者とはそう言うものなのかと思いその部屋で娘と死者が交流を重ねるのをそっと見守った。    しかし、家族が彼女の力を受け入れていても、大多数はそうではなかった。  パーティ会場での騒動は、彼女が国の危機を知らせたことなど忘れられ、恐ろしい骸骨の噂が人から人へ流れる。  やがてその噂はさざ波のように国土に広がり、誕生日から半年後にはすっかり“死を纏う穢れた姫”の二つ名が独り歩きしていた。
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