死の森に舞う

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「あらそれは楽しそう」  ジュレまでそう言うとクローディアの隣に並ぶ。  その顔は妙齢の女の顔になっていた。まやかしの肉を得て、彼女はすっと手を出す。 「どちらが踊って下さるの?」 「あ、私も!」  ジュレと並ぶと随分と幼く見えるクローディアが負けじとその手を差し出した。 「いや俺ダンスなんて知らないから」 「あら、じゃあ私が振り回してあげるわ」 「マジかよ……」  ジュレがシャンピーの手を取る。  彼女は堂々とした男性のステップを踏むと、宣言通り彼を振り回すように踊った。   「ちょい! 腕がまた外れるって!」 「あら脆いわね。そんなんじゃ忠誠を立てた所でクローディア様を守れないんじゃなくて?」 「言ったなコイツ……」  シャンピーがぐいっとジュレの腕を引き、その腰に腕を回す。  密着した骨と美女が互いに見つめ合っていた。 「いいじゃない。私強引なのも結構好きよ」  不思議な魅力を持つジュレは余裕の笑顔。 「クッソ生きてる時に言って欲しかったぜ……」 「生まれ変わって見つけられたら一晩くらい相手にしてあげてもいいわ」  少々大人の世界が始まった二人を背中に隠すと、エクレールが未だ宙に浮いているクローディアの手を取った。 「姫、お相手を」 「ふふっ。私はジュレみたいに大人じゃないけどいいかな」 「愛らしい女性にお相手願えるのなら年齢に関係なく光栄では」  そう言うとエクレールが一歩踏み出す。  体格差を考慮した小さなステップは、たちまちクローディアを王宮の夜会へといざなった。 「凄い……エクレール、あなた貴族だったんじゃない?」 「さあなんとも。ただこの魂にダンスの記憶があってよかったと思う」 「どうして?」 「貴女が笑顔になった」 「……うん、楽しいもの!」  エクレールの揺れる体に合わせ、クローディアのデタラメなステップが付いて行く。  木々が風にざわめく音と、鳥の鳴き声を舞曲に、昼間の泉には死と乙女の舞踏会が開かれたようだった。  ひとしきり踊り、笑い、楽しい時間は過ぎ、今クローディアは寄りかかるのにちょうどいい木の幹に体を預け、スヤスヤと昼寝していた。  汚してしまうのは忍びないとドレスを着替え、そのまま軽い昼食を食べた後のことだった。  随分とはしゃいでいたので疲れてしまったのだろう。  その体にジュレから渡された毛布をそっとかけたのはエクレールだった。  長いまつ毛を伏せ、ダンスの時の幸せな余韻のまま眠っているようだった。  そのふわふわの髪をひと撫ですると、彼は少し離れた所に座り彼女を見守った。
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