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「なぜ俺にその話を?」
「何かあった時に、この世に引き留めて欲しいから」
「それなら俺はどちらかと言うと死後の世界に連れていく方だろう。それにそれだったらシャンピーの方が俺より心の距離は近いのでは?」
「あなたとシャンピーは違うわ」
「どういう――」
意味を尋ねようとしたら、大きく伸びをするクローディアの声が聞こえた。
どうやら目覚めたらしく、今は誰はばかることなく大きな欠伸をしている。
そしてエクレールたちの姿を見つけるとパっと笑顔を見せた。
「おはよう! お昼寝気持ちよかったの!」
彼女はそう言うと自分で毛布を片付け、腕に抱えると傍にやって来た。
「それ以上寝ているとおやつを無しにするところでした」
「だめー! 今日のおやつはなあに?」
「ベリーのジュレです」
「美味しそう!」
「ただし夕食の野菜スープを召し上がるのが条件です」
「うぅ……」
「クローディアは野菜が苦手なのか」
「に、苦手じゃないもん。……嫌いなだけ」
「苦手より悪いな」
「食べる! 食べるわ野菜のスープ!」
「ではご用意して参ります」
クローディアは「やった」と言いながらジュレに付いて行く。
ふわふわと髪を揺らし追いかけて行くその背中を見たエクレールは、ジュレの言葉を反芻した。
あの華奢な背中は、常に死に追われているのかもしれない。
自分が死んだ理由は分からないが、冥界に引き込むのではなく追いかけて来る死の影を払う者でありたい、そうでなくてはいけないと強く思った。
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