悪霊を送る

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悪霊を送る

コーンッ  小気味良い音が森に響く。  少しするとまた同じ音を響かせ、森の小屋の前では薪割りが続いていた。  シャンピーが斧を振りかざすその横で、エクレールは宙に木を放り投げると、絶妙なタイミングで剣を薙ぎ払い真っ二つに割っていた。 「あんた死んでも修行かよ」 「すまん、つい楽しくなってしまった」  それでもなおもう一本木を投げると、これも見事に二つにした。 「二人とも! 薪割りありがとう。わあ凄い。冬が三回は越せそう!」  シャンピーが「流石にそれは無理」と笑いながら答え、実際は冬場に二週間ほどで使い切る量の薪を積んでいった。 「私、これからちょっと森の中を散策するんだけどどちらか一緒に来てくれる?」  「ならば俺が」とエクレールが骨の馬を用意し、クローディアの小さな体を引き上げた。 「エクレール、散策とは言うけれど目的は悪霊を追い払うことよ。ちょっと数がまた増えてるの。気を付けてちょうだい」  ジュレの言葉にエクレールは大きく頷くと、馬首を森の奥へと向けた。 「しばらく南に向かって。気配が分かったらまた言うね」 「一人で払うのか? ジュレは共に行かないのか?」 「うん。ジュレにはね、あんまり魔法を使わせちゃいけないの。かくれんぼの最中だから」 「かくれんぼ?」 「ジュレの胸の宝石みたいの、見たことある?」 「ああ、あれが本体だと言っていたな」 「あれを狙われてるんだって。魔法をあんまり使うとバレちゃうから使わないの。昔のすっごい魔女で、同じようにすっごい悪い魔術師にずーーっと追っかけられてるんだって」 「それは難儀だな……」  魔術師が職業として存在していたのはもう二百年以上前のことなので、少なくともジュレは二百歳ということになるのだろうか。  その年月に思いを馳せていると、「もう少し東かな」と聞こえた。 「子供の頃ね、お城のお庭で、まだ小さい弟とかくれんぼしてたの」  唐突に始まった思い出話に、エクレールは周囲への警戒はそのままに耳を傾けた。 「私が隠れてたら、いつの間にか子供の幽霊が一緒に隠れててね、二人でお喋りしてたら弟に見つかっちゃって。そうしたらその子が“私も早く見つけて”って言うの」  相槌を打ちつつ先を待っていると、ふと隣に並走する騎士がいることに気づいた。  馬も騎士も向こうが透けている。随分と儚いその姿に、クローディアは「大丈夫よ」と言った。
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