心に灯る

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  「さあどうする? 死体のまま、癒すことは出来ない代わりに彼女を守る? それとも、一か八か、彼女への想いを礎に生き返る?」 「俺は……」 「ねえ、どういうこと?」 「クローディア……」  どこから聞いていたのかは分からないが、いつの間にか寝ていたはずのクローディアが身を起こし、不安を浮かべた顔でこちらを見ていた。  彼女もエクレールが生霊であることは知らなかったようだ。 「ねえ、生き返るってどういうこと?」 「クローディア。いずれ耳に入れなければならないことね。そのまま聞いて」  そしてクローディアは、エクレールが生霊であったと初めて知る。  このままでは本当に死んでしまい、もう生き返ることは出来なくなる。  ただしクローディアであれば、正しい手順を踏めば彼を生き返らせることが出来ること。  それは期限付きであること。 「それじゃあ、私が生霊って気づかなかったらエクレールはこんなことになっちゃったの?」  クローディアが半べそになって聞いて来る。  もしかしたらエクレールを殺してしまうかもしれないことを恐れてのことだった。 「今すぐ還してあげよう。早くしないと死んじゃうんでしょ? そんなのだめよ。ちゃんと生きなきゃ」 「だがそれではクローディアの護衛が――」 「私の護衛なんて心配することじゃないでしょ! また他に探せるもの。でもあなたの命はあなたのものであって、私が左右しちゃいけない。本体が元気なうちに早く戻って、私のことなんて忘れてもかまわないから自分の人生を生きて!」 「忘れたくなどない!」  エクレールが怒鳴り声を上げ、クローディアの目から涙が一筋落ちた。  エクレールが忘れたくなくても忘れてしまうだろうし、クローディアが忘れたくても忘れることはないだろう。 「少し二人で話合って」  そう言うとジュレは出て行った。  残ったクローディアとエクレールはしばし押し問答を繰り返していたが、このまま留まれば彼女が一生エクレールの死を背負い続けることに気づき、最後は彼が「分かった」と言う事で一件は落ち着いた。    せっかく悲しみが晴れたと言うのに、彼女は朝までエクレールの胸で泣き続けていた。  生きていることは喜びなのに、別れを思うと辛くなった。  彼女もうっすら気づいていたのだ。  自分の中に淡い想いが芽吹きそうだったことに。
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