初夜

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「ううん、嫌じゃなかったよ。少しびっくりして……」 「これ以上ここに一緒にいては危険だな。俺の歯止めが効かなくなりそうだ。俺はあっちのソファにいる。偽装のためにも君はこの薄衣を脱いで眠ってくれないか」 「……うん」 「それと君が眠った後に俺もここで共に眠る。朝起きた時に驚かないで欲しい」 「うん。それは大丈夫なの。一緒にいなかったら変だものね」 「では俺はあちらに……すまん、やっぱりその薄衣、俺が脱がせてもいいか? 君の全てを一目見たい。それ以上は何もしないから」  クローディアは驚いたものの、顔を赤らめながら「うん」と小さく答えた。 「ディア……」  服を脱がす。  それだけでこんなに心が乱されるとは。  エルキュールは興奮で呼吸が荒くなりそうなのを必死に隠し、彼女の薄衣に手をかけた。  首にある紐を引っ張れば、えりぐりに集められていた布が広がり肩が剥き出しになった。  ひっかかる布に少し手をかけると、それはするすると下に落ちていく。  彼女が恥じらいを堪える中、白い胸に薄紅の蕾が乗っているのが現れ、エルキュールは生唾を飲み込みそれを眺めた。 「ディア……綺麗だ、美しい、愛らしくて可愛くて狂おしい」 「エルク……んっ……」  腕に中途半端に布を引っかけたまま、唇が塞がれた。  ちゅ、っと吸い付かれた後に離れると、彼はまた布に手をかけ、腰まで落とす。  少し浮いたあばらと、薄い腹が痛々しく思えた。  腰にひっかかる布を取るために、エルキュールは彼女の素肌の背中を支え、ベッドに横たえた。胸はたちまち両手で隠されてしまった。  腰に腕を入れるとなんなく浮き、左手で布を取り払った。  そのまま一気に脱がせてしまうと、彼女の全身をくまなく見つめた。  恥ずかしそうにすり合わせる細い足と、隠し切れない薄い和毛(にこげ)、へそを辿り、隠された胸と、羞恥に染まるクローディアの顔。隠された所を見たかったが、それを無理にすることはしなかった。 「ディア、今すぐ触れたいが、それはまた追々な。この綺麗な体が抱ける日を楽しみにしている。おやすみ、愛しい妻よ。ディア……愛している」 「エルク……優しくしてくれてありがとう。私も……えっと……」 「まだその言葉は言えないのだろう? 大丈夫だ、ゆっくりで」 「ううん、あのね、私は……お慕いしています」  エルキュールはその言葉を目を閉じ感慨深く自分の胸に落としこんだ。 「ありがとう、嬉しく思う。ではおやすみ……」  最後に横たわる彼女の唇に軽くキスを落とし、足りない分は額に落としてから離れた。  上掛けをかけて体を隠してやると、彼女は穏やかに微笑んだまま目を閉じた。  ソファに座り大きく息を吐き出したエルキュールは、そのままそこでクローディアが完全に眠りに付くのを待った。  そして眠っていると分かると、「さて」と立ち上がる。  眠るクローディアの元へ行くと、ベッドに隠された護身用の短剣を探し出した。    夫婦の証を偽装するには、その材料があればいい。  つまりは自分の体液と、処女を貫いた時の僅かな血があれば。  どちらの血なのかまでは見て分かるものではない。  そしてどちらも自分から調達可能だ。  数十分後、偽装を終えた彼はクローディアの隣に、うっかり手出ししないよう出来るだけ彼女から離れて目いっぱい端に寄ると、背中を向けて眠りについた。  
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