侍女、リーユ

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「ルブラード様がお呼びです」 「分かったと伝えろ。ディア、とても素敵なキスだった。君と愛を確かめ合えたようで嬉しい。だが何か言いたいことがあったのではないか?」 「……私もちゃんとあなたが好きって、確認したかったの……」 「その動機が気になる。焦るな、俺はじっくり待つ。だがそんな焦りさえなければ、今のようなキスは大歓迎だ」 「うん……」 「さあ面談だ。君の侍女候補に来てもらった。君も会う……だめだ、そんな表情で他人には会わせられない」  クローディアは蕩け切った顔をしている。  いまなら体を繋げようとしても受け入れてもらえるのではと思うくらい、色香が漏れ熱い目で見上げて来る。  しかもその細腕はエルキュールの首に絡みつき、まだ足りないから欲しいと言われているようだった。 「えるく……」 「く……そんな誘う名の呼び方をしないでくれ。なんでそんな愛らしいんだ……」 コンコンコンッ  急かすようなノックの音。  エルキュールはもう一度だけ短く深いキスをすると、「行ってくる」と言った。  侍女にテストはキャンセルさせクローディアを部屋まで連れて行くように言い、一人で面談をすることにした。  本当はクローディアも一緒にして欲しかったのだが、あの顔では誰の前にも出せない。侍女だって本当は見せたくない。  その侍女は二人の様子に複雑な表情をしていた。  父親の思想に染まっていそうな彼女にこのままクローディアを任せるのは安全面の上でも問題だ。  それにしてもクローディアが、どうして急にあんな情熱的なキスをしたがったのかが気がかりだ。後で追々探るとしよう。  そして彼は一人で面談をすると、さすがルブラードの紹介だけあって問題無しと判断し、すぐに来てもらうことになった。  こうして彼女の生活が一つずつ盤石なものになっていけばいいと思う。  新しい侍女はリーユと言い、身寄りも家財もあるような者ではないので明日にでも来れると言う。  この日はティータイムの時に妻を紹介するだけにし、彼女の言う通り明日から来てもらう流れとなった。
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