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あ、この人形……
一目見て、この人形が昼間に見た、本堂の縁側に並んでいた人形だと分かった。
髪の毛は黒々と艶やかなのに、着物は色褪せて白くなっている。
その黒い髪の人形は、少しずつ歩みを進めて、ついには僕の顔の辺り迄やって来た。
すると、その黒い艶やかな髪の毛がスルスルと伸び始めて、僕の髪の毛に絡みついた。
「ヒッ!」
僕は小さな悲鳴をあげると、恐ろしくて目を固く瞑った。
ザワザワと髪の毛が蠢く気配が暫く続いた。しかし、それもやがて治ると、髪の毛が蠢く気配が引いていった。
僕が恐る恐る目を開けると、その黒い髪の人形は背中を向けて、部屋から出ていくところだった。
僕は、ホッとして、思わずフーッと小さく溜息を吐いた。
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