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僕は昨日の夜の出来事を墨村さんに相談しようと、食堂と呼ぶには小さ過ぎる、食事をする為の共同スペースに向かった。
僕がその部屋に入るのと前後して、丁度、起きて来たばかりの墨村さんが、部屋に入って来た。
「何か食べるか」
呟くように言うと、墨村さんは僕の分と自分の分の握り飯を、あっという間に二つずつ握ってくれた。
何の具も入っていない、黒い海苔を巻いただけのシンプルな塩握りだったけど、びっくりするほど美味かった。
「昨日の夜……」
握り飯を食べ終えて、僕が相談しようとすると、
「茶を入れてくる」
僕の言葉を遮って、墨村さんは席を立ってしまった。
え?何で……
墨村さんはお茶を入れると、直ぐに戻って来て僕の目の前に湯呑みを置いた。
暫く、二人で黙ってお茶を啜る。
時折、墨村さんは、僕に意味ありげな視線を送って来たけど、自分から口を開くことはなかった。
これってどういう意味なんだろう。僕は墨村さんの様子を伺いながら考える。墨村さんは何かを知っている。だけど、口に出来ない?
「あの……」
僕は、それを確かめる為に敢えて墨村さんに話しかけた。
グゥォッホン!
墨村さんは、白々しいぐらい派手にお茶を吹き出すと、台所へと去って行った。
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