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その日の夜、僕は黒い髪の人形達が、僕の元を訪れて来ることを願って布団に入った。
そして、遠くに聞こえる、墨村さんのお経の声を聞きながら眠りに落ちた。
キシッ、キシッ、キシッ
夜半、人形達が廊下を歩いて来る音で目が覚める。
僕は人形達が障子扉を開けて、部屋に入って来るのを待った。今日は金縛りにはならなかった。
暫くすると、障子扉が開き、黒い髪の人形が部屋に入って来た。
人形特有の微笑みを湛えたその白い顔からは、何の感情も読み取ることは出来ない。
だけど……
僕は人形達の想いに心を馳せた。
人形達が、自分の黒い髪の毛を人に繋げたい理由。
それは、とりも直さず、人と繋がっていたいという切なる願いの現れではないだろうか。
何らかの原因で断ち切られてしまった繋がり。その繋がりが太ければ太い程、途切れてしまった悲しみは深い。
どうして?
どうして、いなくなってしまったの?
どうして?
どうして、わたしを捨ててしまったの?
どうして?
人形達の深い悲しみの声が、僕の心になだれ込んできた。
思わず、僕の瞳から涙が溢れた。
「おいで。僕と繋がろう。僕が君達と繋がってあげるよ」
そして、僕達は黒い髪の毛と髪の毛を絡み合わせて、深く深く交わった。
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