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「何か御用かな?」
「ひっ!」
突然、背後から話し掛けられて、思わず小さな悲鳴が漏れた。
振り向くと、そこには袈裟を着た禿頭の老人が佇んでいた。
恐らく、この人がこの寺の住職なのだろう。その顔には深い皺が幾つも刻まれ、その皺の間に紛れた細い目からは、鋭い眼光が放たれている。その眼差しは、あまり好意的とは言い難かった。
「あ、あの……」
僕が勇気を出して、話し掛けようとすると、
「その髪の毛は?」
住職は鋭い目指しをさらに険しくすると、おもむろに歩み寄り、僕の髪の毛をマジマジと見つめた。
「何かご存知ですか?」
僕は恐る恐る住職に尋ねた。
住職は僕の髪の毛を暫く凝視していたけど、大きな溜息を一つ吐くと、何度も首を横に振って僕から離れた。そして、
「ついて来なさい」
と言うと、僕の質問には答えずに、クルリと背中を向けて、本堂の脇にある細い道へと歩き始めた。
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