黒い髪の人形

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 住職の後に付いて暫く進むと、本堂より少し小さ目の古びた木造の建物が現れた。 「入りなさい」  住職はぶっきらぼうに呟くと、さっさと草履を脱いで、家の奥へと歩みを進めた。僕は敷居を跨ぐと、急いで靴を脱ぎ、慌てて住職の後を追った。  僕が一歩歩く度に、古くなった板張りの廊下がキシキシと音を立てた。その音は、今の僕の窮状を嘲笑っているかのように聞こえ、僕を落ち着かない気持ちにさせた。  住職は奥の座敷に僕を案内すると、ペラペラに薄くなった座布団を渡した。そして、自らもペラペラの座布団を床に敷くと、その上に静かに腰を下ろした。 「ここの住職をしている墨村(すみむら)です。君の名前は?」 「南瀬(なんせ)です。南瀬明宏(なんせあきひろ)」  僕は名前を名乗ると墨村さんの言葉を待った。 「何があったのか全て話してください」    墨村さんは厳しい表情で僕に説明を求めた。
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