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僕は今迄のことを出来るだけ端的に伝えた。
肝試しの時に中津川君が見た蠢く黒い髪のこと。手帳に書かれていた中津川君が髪の毛に吸いつくされる様子。そして、彼の部屋を訪れた僕の髪の毛が異常な速さで伸び始めたこと。
墨村さんは話を聞き終えると、額に手を当てて俯いてしまった。そして、深く大きな溜息を吐いた。
「そうか。黒髪達がザワザワしているのは、そういうことか」
墨村さんは呟くように話すと顔を上げた。そして、
「君の友達は可哀相なことになってしまったな」
と、幾分、表情を和らげて申し訳なさそうに僕に伝えた。
「あの……僕を、僕を助けてください!」
何か事情を知っていそうな墨村さんに、僕は必死に頼んだ。
しかし、墨村さんは黙り込んでしまった。そして、おもむろに立ち上がると、
「茶を入れて来る」
と言って部屋から出て行ってしまった。
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