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「この寺はな、各地にある人形寺や神社で供養仕切れなかった人形達が、密かに送られて来る場所なんじゃ」
墨村さんの話に僕は息を呑んだ。
「墨村家はな、そんな人形達に毎日経をあげて、代々お慰めしてきた」
「しかしな、時に黒髪達が騒ぎ出す夜があってな、これまでも、度々呪われ人を出してきたんじゃ」
「その人達はどうなったんですか?」
助かった人はいるのだろうか、僕は恐る恐る墨村さんに尋ねた。
「助かった者もおるにはおる。しかし、ほとんどの者は……」
助かった人がいる!それだけで充分だった。
「その人達はどうやって助かったんですか?」
僕は勢い込んで墨村さんに尋ねた。
そこで、墨村さんはもう一口お茶を啜った。それから、静かに口を開いた。
「私が見てきたことで、伝えられることは伝えよう。ただ……後は、君次第だな」
墨村さんの言葉から、助かる見込みがかなり低いものであることが伝わってきた。しかし、何も出来ずに、ただ死を待つよりは、ずっといい。
「よろしくお願いします」
僕は一縷の望みを掛けて、墨村さんに深々と頭を下げた。
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