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おちついて、あらためて北山くんをながめる。ひとなつこい感じで、ちょっとチャラチャラしたリア充感が、前面にでている西くんと対照的に、印象はまじめでおとなしめ、誠実そうにみえる。顔は西くんよりあまくてかわいい目、髪型はサラサラストレートのマッシュヘアだけれど、手をいれている感じはない自然体。体形は西くんとおなじか、ややほそめだけれど、もしかしたら着やせしてみえるタイプのかもしれない。服装も西くんとくらべると、地味で無難な感じだ。
うん。どちらが好みかといわれたら、わたしは北山くんのほうが好みだな。
受け攻めでいったら、西くんが攻め、北山くんが受け。でも大穴で、北山くん攻めの西くん受けもよいかも。……むしろ、リバもあり?
と、いつものBL思考でかんがえる。
そして、はっと気づいた。
いつもはただの妄想だけど、今回にかぎっては妄想じゃないのでは? 現実に、なっちゃうの……では!?
でもまって。
その場合は【わたし✕西✕北山】?
それとも【北山✕(わたし✕西)】?
もしくは【わたし✕(西✕北山)】?
もしかして【わたし✕(北山✕西)】?
……混乱してきた。
とりあえず、西くんの目的はそれなんだし【わたし✕西】は確定だろう。
問題はその後。【西✕北山】か【北山✕西】かだ。
できるのならば、そこから、わたしをひきたいのだけれど……。むり、かなぁ?
真剣にかんがえすぎて、今日は涼しかったとかなんとか、あたりさわりのない社交辞令を、うわの空で相手すしている。
ざわざわとうるさい居酒屋はひとが多くて、他人の話なんて気にしないだろうって感じで、かえって話しづらい話題は話しやすい。けれども、ああ。核心は聞きたいけれど、聞きづらい。
けれどもここにいる時点で、西くんにかぎらず、北山くんも性的には、ほどほどにオープンなはず。それはわたしもなんだけども……、だってそもそもの前提が、3P……だもんねぇ。
もんもんとしているのも、きもち悪くて「よし!」と覚悟を決める。ものごとは、ハッキリ、スッキリ! もやもやを抱えるのは性に合わない。
「……ねえ、ところで。ほんとうにいいのかな、条件覚えてる?」
わたしのとつぜんの話題転換に、西くんが食い気味でついてくる。
「みなみさんこそ、いまさらやだって言わないでよ。おれちょー楽しみにしてきたんだけど」
「や……、まぁ……うーん……」
歯切れわるく答える。改めて聞かれると「やだ」って言いたい。むしろわたしは、壁になってあなたたちをながめていたい。……とは、ちょっと言いづらい。
「いいんだよね? せっかく北山もつれてきたんだし! 北山もイケメンでしょ」
そうだよね~、トホホ。と心のなかでため息をつき、「まぁ、いいけどぉ~」と往生際わるくつぶやく。
「それより、西くんはいいの? てか、北山くんもいいのかな? まさかだまして連れてきてないよね」
にわかに不安になり、うたがってかかるわたしに、当の北山くんがわらって返事をする。
「大丈夫ですよ。条件はちゃんと聞いてます。西と絡めばいいんですよね」
このおちつきはらった返事。北山くんはもしかして、神!?!?
「おれも覚えてるよ。みなみさんがおれのおしりの開発をしてくれるんでしょ? そういう風俗とかいったことないから、楽しみにして来ちゃったよ!」
そして、何も考えてなさそうな西くんの返事。
そうか、そういうふうにとらえたんだ。確かにおしりの性感ヘルスもあることだし、それへの抵抗はないんだね。なんておばか受にありがちな導入……。
「えーと、てことは、北山くんは……?」
「バイですね。なので、みなみさんも大丈夫ですよ」
質問の意図を読んで答えてくれる。
バイかぁぁぁ~、残念!
わたしのことは大丈夫じゃなくてもいいんだけど。でもこのルックスならわたしは役得か。
「なるほど。ゲイだったら、見たくないものを見せちゃうんじゃないかと思ったんだけど、バイなら平気だね」
年上の威厳というよりはやけくそで答える。
「一応確認するけど、西くんはノンケだけど、北山くんと絡むのはいいってこと?」
「ノンケ?」
「女が好きってこと」
「あー…、まあ。女の子すきだけど、北山なら顔もいいし、キスくらいは抵抗ないかなって。あこがれの3Pだし、みなみさんとヤレるならいっかなぁ」
あきれるほど、何にも考えていなさそうな返事が返ってくる。
あーぁ。見た目のいい男はヤリ目かよ。
そう心でなげいて、目の前のイケメン2人を見る。北山くんなんて、誠実そうなのに残念すぎる。
「うわさには聞いてたけど、西はおどろくほど変わったね」
ふう、というため息とともに、北山くんがつぶやいて、あわてた西くんが、会話をとめにはいる。
「あっ、ばか! むかしのこと言うなよ!! おれだってお前がこんなんに乗ってくるの、おどろいてるんだから!」
「まえはちがったの?」
「いまはこんなんだけど、高校のころはすっごい純情だったんですよ」
「そうなの?」
北山くんはにっこり笑って言った。
てっきり西くんは、ずっと女たらしだと思っていたけど、ちがうんだ。心底おどろいていると、顔を赤くした西くんが反撃する。
「北山だって、優等生だったじゃねーか!」
「おれはいまでも優等生だろ」
「こんなん……、3Pに乗ってくるとかさぁ、とんだムッツリじゃん!」
「そんなことオープンなのは西くらいだろ。おれだってかくしてただけだし、普通はかくすよ」
「……じぶんから話に乗ってきたくせに」
西くんの、リア充ヤリチン全開じゃない、はじめて見る顔だった。へらへら笑って余裕ぶっているふだんより、こっちのほうが断然いい。
この過去を知ってる同級生感、すごくいい! 西くんをかんたんにおさえ込んじゃう、北山くんとの年相応なやりとり! ありがとうございます!!
あ~もう、わたしは完全なモブ! と天あおいだ。モブはめだちすぎないよう、いかにうまくふたりを近づけるかが、腕の見せどころだ。はたしてわたしに、それが出来るのか? 出来なくてもやるしかない。この二人のために!!
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