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彼の想い
「あ。電話かかって来ちゃった」
西くんのスマホが、テーブルの上で着信をつげている。ちょっと電話してくる、と西くんが席をはずして、わたしと北山くん、ふたりになった。
こっそりと北山くんをぬすみ見る。西くんと仲がよいのはさっきのやりとりでわかった。けれど、見ればみるほど北山くんはこんな誘いに乗るタイプには見えなくて、気になっていたことを聞いてみた。
「ね、北山くんはほんとうにいいの?」
「だいじょうぶですよ」
「同級生と3人でスルとか気まずくない?」
「気まずくはないですね」
「ないんだ。まじめそうに見えるのに……、すごいね」
「むしろみなみさんの方がすごくないですか? あんな条件、なかなか出さないと思うんですけど」
「あー…、ね。そうだよね」
ほんとうは、西くんのことを、あしらいたくて出した条件とは、ここに来ている北山くんにはちょっと言いづらい。しかたなく、えへへとわらってごまかすわたしに、もしかして、と北山くんが問う。
「もしかして、西をあしらいたいだけで、本気じゃなかったとかです?」
「あはは。ま、そんな感じですね。つい、いきおいで言っちゃったっていうか、願望がでちゃったっていうか」
「願望って、複数がしたいっていう?」
「えっ? あっ、ちがう、ちがう! そっちじゃなくてっ」
「そっちじゃなくて?」
「あっ……」
しまった、複数願望にしておけばよかった。と思ってもあとのまつり。……いやまあ、複数って願望はないしね。しかたない。ここは素直に言ったほうがいい気がする。
そもそもが、北山くんが西くんと絡んでくれるはずですし!
「……男どうしで絡んでるのが見たいって、ほう……、です」
「……」
やっぱり、他人の、しかも男同士のセックスが見たいというのはまずかったか? と反省したとき。
「……よかったぁ~。やっぱり、そうですよね!?」
「えっ? なにが?」
「みなみさん、ボーイズラブとか、好きなのかなって……」
あ、やっぱりそこはバレてますよね。そうですよね。西くんは、まったく気づいてなさそうだったけれど。
「……じつは、そうなんです」
ほんとうにごめんなさい。興味本位で! しかも好奇心百パーセントで他人のセックスが見たいとか言って!!
へらっと笑ってごまかすわたしに、北山くんが向きなおる。
「あの、協力してもらえませんか」
「え?」
「……この話、西が3Pできる男の相手を探しているって聞いて、じぶんから立候補したんです。こんなチャンス二度とないと思って……」
「……と、申しますと?」
おもわず言葉がかしこまる。
「西のことが好きなんです」
北山くんは目元をあかくそめて目をふせた。長いまつげの影が、ほほに落ちる。そうして、手元のビールジョッキを、うすくて桃いろのくちびるにあててあおった。
「まっっっって!!!」
「え?」
「あ、ごめん。こころの声……」
おもわず声に出していたらしい。
まって?
もしかしたらもしかして、これ、ほんとにボーイズ・ラブの展開??
「えっと……、聞きまちがいかもしれないので、確認するけど、北山くんは、西くんが、好き」
「そうです」
「……で、協力してほしいと、そういうことですか?」
「そう、です」
マジですか!?
「ほんとうはもうあきらめていたんですけど、話を聞いていたら、もしかしてって。だから、最後のチャンスだと思ってかけてみようかと……」
そう苦笑して、北川くんが語りだした。
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