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「乾杯」  お酒を口に流し込むと、舌の上でキリッとした中に甘味が広がり弾けた後、心地よく胃の中に流れていく。 「はー、美味しい」   「これ、プレゼント」    健治が優し気に微笑み、綺麗にラッピングされた小さな箱をテーブルの上に置いた。 「えっ? こんなに素敵なお店に連れて来てくれたのに、プレゼントまで用意してくれていたなんて……。ありがとう、開けていい?」 「ん、開けてみて」  赤いビロードのリボンを解き、ガサガサと包み紙を開ける。中から出て来たのは、有名ブランドのネックレスだ。 「ありがとう。大切にするね」  そう言って、ネックレスを自分で付けようと持ち上げた。  すると健治がスッと立ち上り、私の横に来ると手のひらを差し出す。 「つけて上げるよ」  髪を寄せ襟足を健治に晒すと、ネックレスチェーンのひんやりとした冷たさと、時折触れる健治の手の温かさを感じて、頬が熱くなる。  赤く染まった首筋から繋がるデコルテにチェーンに繋がれた一粒のダイヤがキラリと輝きだした。 「良く似合う」 「本当? 嬉しい、ありがとう」  健治が私の頬に手を添え、軽くキスを落とした。優しく見つめる瞳が柔らかいカーブを描く。 「改めて、お誕生日おめでとう。今度、ゆっくり温泉にでも行こうな」 「うん、楽しみにしてる」      このまま穏やかな時間が、ずっと続いて行くことを願っていた。
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