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 *  野々宮に乱されたワイシャツのボタンを俺はかけ直した。  野々宮は、俺の言っている事が理解できないのか、ポカンとしている。  やがて、考え付いたのか鬼の形相で言葉を吐きだす。 「こんなのただの遊びじゃない。私とだったら、あのつまんない女と違って色んな事が楽しめるのに何言っているの」  今、美緒の事をと言った。人を見下す事でしか自分を上げる事ができないは、野々宮、お前の方だ。 「悪いな、お前じゃ、勃起し(たた)ない」 「何言っているの? ここまで来ておいてバカじゃないの?」 「ああ、本当にバカだった。もう、やめよう」  下着を履き直し、スラックスを引き上げた。  後ろの鏡に自分の情けない姿が映る。  視線を移し、野々宮の方を見るとブルブルと手を震わせ怒り心頭の様子だ。  もしかしたら、今後、面倒くさい事になるかもと思ったが、それを気にしたら野々宮のご機嫌取りをすることになる。そんなの元の木阿弥だ。  背広の上着を羽織り、ネクタイを丸めてポケットに入れた。  代わりにポケットからUSBメモリを取り出し、部屋の備え付けカウンターの隅に置く。 「私の事を置いて行くなら仕事で困ることになるわよ」  負け犬のような叫びをあげる野々宮を、俺はフッと鼻白む。 「いざとなったら仕事を辞めて嫁さんに食わせてもらうからいいさ」
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