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Side 美緒 今日も健治は仕事で遅い。  こんなに毎日遅くなる事があるのだろうか?  もしかして、とか  やっぱり、とか  だんだんと疑惑の種が芽を出し大きくなり始めている。    寝室にいると隣の空いたベッドが気になって、嫌な事ばかり考えてしまう。眠くなるまでリビングでテレビを見て気を紛らわせる事にした。 うっかり、ネット配信のサスペンス映画を見始めたら案外面白くて、目が離せない。  明日も仕事なのに何やっているんだろう。  そんな事を考えていると、テレビ画面から悲鳴が聞こえてくる。主人公が犯人に追い詰められているのだ。  ハラハラな展開から目が離せない。  テレビにくぎ付け状態の私は、突然、「美緒、ただいま」と言う声とともにギュッと後ろから抱きしめられた。 「きゃー!」  何事かと思ったら健治だ。  タイミングがタイミングだけに心臓が止まるかと思った。  そっと、忍び寄るなんて怖いことしないで欲しい。   「驚かせて、ごめん」  と、もう一度抱きしめられた時、健治からフワリと香水の甘い香りがするのに気付いてしまった。  香水を付けない私は、僅かな香りでも直ぐにわかる。  なんで、仕事で遅くなった健治の服から女性用の香水の香りがするの?  私の中の疑惑の種が芽が、大きくなる。  手元にある真新しい猫柄のスマホケースを握りしめた。  その中には、設定済みのGPSカードが忍ばせてある。
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