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「俺、風呂入ってくるよ」 「うん、そうして」  思わず冷たい声が出てしまった。  でも、他の女の影を感じて、優しくなんて出来ない。  瞬間、驚いた顔をした健治は、取り繕うように眉尻を下げ、弱々しく微笑んでから、リビングから出て行った。  心の中がモヤモヤして、気持ちが治まらない。  バスルームのドアが閉まる音を聞いた私は、そっと立ち上がり、ソファーの足元に置かれた健治のビジネスバッグを開いた。  こんな事は良くない。と心の隅で誰かが囁いている。  悪い事をしているという自覚がある分だけ、ドクドクと自分の鼓動がうるさく耳に響く。  スマホケースから取り出したGPSカードを目につかないように、バッグの底にある中敷きの下に入れた。  野々宮果歩と関係を持っていたと知ってしまった日から、信じようと思っていても信じられなくなっている。  本当は、GPSカードを仕込むようなマネはしたくないのに……。  石を飲み込んだように、胸の奥が重くなる。  一生を共にすると誓ったはずの夫を疑って、GPSカードを仕込むなんて、間違っているとわかっているのに、この衝動を止められない。  お願いだがら、もう、私を裏切らないで……。    
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