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美緒と小松さんとの会話を終えた頃、蒔田医院長が男性を伴ってやって来る。
その男性は、柔らかな雰囲気の中にもしっかりと芯が有るタイプだ。患者としてこの医師に出会ったなら自分の幸運に喜びを覚える事だろう。
この男性がさっき事務員さん達の話題に上っていた”三崎先生”なのだと認識する。
「お待たせ、そろそろ始めようか」
蒔田医院長が声を掛けたタイミングで、美緒が二人に俺を紹介してくれた。
「蒔田先生、三崎先生、偶然なのですが、今日のMRさん私の主人なんです」
「ああ、そういえば先程ご挨拶頂いた時に菅生さんと伺いましたね。それにしても偶然ですね」
蒔田医院長が言うと隣に立つ三崎医師が驚いた様子で俺の方へ振り返る。
「美緒さんのご主人?」
”美緒さん”だと!?
聞き捨てならないと思いながらも仕事で来ている手前、問い質す事も出来ない。
三崎医師に名刺を差し出し、牽制する。
「アルゴファーマの菅生健治と申します。三崎先生には、うちの妻がいつもお世話になっております」
「こちらこそ、いつもお世話になっております」
名刺を交換する瞬間、ピリッっと、二人の間に緊張が走った気がする。
「さあ、挨拶も済んだ事だし始めようか」
蒔田医院長の声を合図に、その緊張から解かれ業務に戻る。
「それでは、新しく発売になります。健忘症薬についてご説明をさせて頂きます。改めましてアルゴファーマの菅生健治と申します。本日は宜しくお願い致します」
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