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* 「三崎先生には、の体調不良を診察して頂き、本当にお世話になっております」 「いえいえ、こちらこそ美緒さんには良くして頂いています。心配事があると精神的に強いストレスが掛かり、回復が遅れるので心配です」  三崎医師に美緒の体調不良が強いストレスによるものだと言われ、遠回しに”お前のせいじゃないのか?”と指摘されている気がした。 「私も心配しているのですが、仕事が忙しく夜遅いものであまり力になれていないんです」  逃げ口上がつい出てしまう。 「そうですか、お忙しいご様子ですね。美緒さんは芯が強く、自分の中にためこんでしまう性格のようですね。何かと無理をしがちなので、菅生さんも心配でしょう」  三崎医師の言葉は、こちらを気遣うセリフなのに、責め立てられているように感じられた。  これ以上、言われないように別の方向へ水を向ける。   「三崎先生、ご結婚は?」  すると三崎医師は、フッと微笑んだ。   「医師の30歳なんてまだまだヒヨッコで、それでも、そろそろ結婚したいなとは思っているんです」  そう言って、三崎医師はひとつ息を吐き出す。  そして、俺に向かって言った言葉に衝撃を覚えた。 「でも、実は……。  好きになった女性がすでに結婚していたんです。彼女が幸せなら、諦めて温かく見守って行きたいと思っているんですが、彼女の結婚生活が幸せそうに見えなくて心配なんです。 夫のポジションに胡坐をかいて、彼女を泣かしている男には負けたくないんですよね」  これは、三崎医師からの宣戦布告だ……。
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