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Side健治  金曜日。  俺は勤務先である大手製薬会社アルゴファーマで、自分のデスクに向いパソコンのデータとにらめっこをしている。  伸び悩病んでいる栢浜(かやはま)市の売り上げをどうにかする手立てを考えなければいけないのだ。  焦る気持ちを抑えつつ、目の前にある書類やメールの返信、電話対応などに追われ、妙案が出ないまま時間ばかりが過ぎていく。   「はぁ、まいったな……」    八方塞がりな状態に、ため息を吐きながら天井を仰いだ。  すると、電話を終えた友部課長が声を掛けて来る。 「菅生君、今良いかね」 「はい、大丈夫です」 「じゃあ、ミーティングルームで話そう」  友部課長の指示に従いミーティングルームへ向かう。    ミーテングルームに入ると宮本部長が既に腰を下ろした状態で、待ち構えていた。  改まって、何の話があるのかと緊張する。  着席すると宮本部長が、おもむろに口を開いた。    「菅生君、君は凄いパイプを持っているようだね」    宮本部長が、話している内容が何を指して言っているのか見当もつかない。  返事のしようもなくて「はぁ」と言葉を濁す。  すると、宮本部長は上機嫌で口を開いた。 「緑原総合病院の医院長から直々にご指名をもらうなんて、菅生君、すごいじゃないか! ジェネリックの見積もりを提出して欲しいとの話だ。栢浜(かやはま)市を菅生君に任せて正解だったな」  思いも寄らない内容に、握った手のひらに力が入る。  野々宮の実家、緑原総合病院の医院長から直々にご指名と言う話に、血の気が引く。  
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