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*  医療関係者の間では、同じ大学出身という事が重きを置かれる事が多々ある。  医局(病院)が人事権を握っていて、同じ大学の出身者である事が優先的に採用する基準になったり、出世にもかなり影響を及ぼす。  一般的な常識よりも、医療関係者の間では、同じ大学出身である事が重要で、タテ・ヨコの繋がりが非常に強く、ネットワークが張り巡らされている。  今まで、新薬の小口取引しかなかった緑原総合病院が、手の平を返してアルゴファーマに取引を持ち掛けた。しかも、営業担当に申し付けるのではなく、わざわざネットワークを使って、上から話を持って来るとは……。  私的な理由で断ったなら、仕返しとばかりに、ネットワークを通じて黒い噂を流されるだろう。  個人への攻撃だけではなく、アルゴファーマに関してある事ない事を拡散され、他の地区のみならず、各都道府県の支社に至るまで、どのような影響が起こるのか想像も出来ない。  案件なのだ。  その考えに行き当たった刹那、宮本部長が口を開いた。  「そのような我が儘は、到底受領出来ない。緑原総合病院の件は向こうから、直々にと声を掛けて下さったんだ。それも菅生君御指名でだぞ。社会人としてありがたく受けるのが道理だろう」  この件を形にしなければ、長年勤めた会社に泥を掛けるだけでなく、この先の人生にも暗雲が立ち込めるだろう。  逃げ場のない迷宮に陥ってしまったようだ。    
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