19

4/7
前へ
/160ページ
次へ
* 「美緒、おはよう」 土曜日の朝、リビングのドアを開けた俺は、身じたくを終えた美緒を見つける。 「おはよう、健治、お休みなのに早起きだね。毎晩残業で疲れて居るんだから、ゆっくり寝てて良かったのに」 仕事に行くはずの美緒の服装は、生成り色のワンピース。白いジャケット羽織ると、オフィスカジュアルな印象で、いつもより華やいで見えた。 「今日、美緒は仕事の後、小松さんの家に泊まりに行くんだろう? 」 「う、うん」 そう言って、美緒は視線を何気なく泳がせた。 小松さんの家に行くだけなら、オシャレな装いなど必要じゃないはず……。 その態度に一抹の不安を感じ、気持ちがざわつく。 「俺は持ち帰りの仕事があるから、今日はなんだかんだ言って忙しいな。夕飯もテキトーに食べて置くから気にしないで楽しんでおいで」 「うん、ごめんね。明日のお昼には帰れると思う」 「じゃあ、帰る前に連絡して。お昼ごはんは、一緒に食べよう」 「ありがとう、帰る時にメッセージ入れるね。じゃあ、いってきます」 「いってらっしゃい」  ざわつく気持ちを必死に押さえ込み、華やかな装いの美緒を作り笑顔で見送った。  パタンとドアが閉まると気持ちが沈む。 「さあ、仕事するかぁ」    
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加