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*  電話口から、野々宮果歩の声が聞こえてくる。  俺は、自分の不機嫌を隠そうとしなかった。 「何の用だ」 「あら、ご挨拶ね。緑原総合病院の薬局製剤責任者に向ってそんな態度でいいのかしら?」 「薬局製剤責任者?」 「そう、私だって薬剤師の資格を持っているんですもの。それに跡取り娘としての役割も果たそうかなって……ふふっ」  それを聞いて、ゾワリと背筋に悪寒が走る。  この前、ホテルでの出来事を思い出す。  美緒を下げる発言を繰り返す野々宮果歩に、「いざとなったら仕事を辞めて嫁さんに食わせてもらうからいいさ」と言った事に対しての当てつけだろうか。  それにしても、緑原総合病院の薬局を野々村果歩が仕切る事になるとは、考えもしなかった。  ワンマン経営の病院とは言え、強引過ぎる人事だ。  やっかいな事になったと、ため息を吐く。   「申し訳ございませんが、本日はどのようなご用件でしょうか」 「お得様は大事にした方が、いいんじゃない?」 「では、日を改めまして、上司と一緒に御挨拶の場を設けさせて頂きます」  あくまでもビジネス口調の俺に、しびれを切らした野々宮から不機嫌な声が聞こえる。 「わかっているクセにいい加減にして!私を怒らせたなら、後悔する事になるわよ」  
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