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「乾杯 !」
久しぶり再会を祝してグラスを合わせる。
ゴクゴクと、美味しそうにビールを飲みほす友人たちは、昔の面影を薄っすら残し、すっかりアラサーのオッサンだ。
という事は、自分もオバサンになって居るのかも……!? そう考えるとチョット複雑な気持ち。
「時間が経つのって早いなぁ。みんな大人になっていて不思議な気分」
「浅木だって、高校の頃に比べたら、ずいぶん変わったよ」
そう言ったのは、向かいの席に座る神田君だ。
自分では、中身は成長していないし、見た目も垢抜けたとは言い難いと思っている。それなのに、ずいぶん変わっただなんて……。
まさか、オバサンくさい?
「高校の頃は、メガネだったから……。印象変わるよね」
オバサンと指摘されたく無くて、予防線を張る。
すると、横から三崎君の声が聞こえた。
「うん、印象が変わったよ。再会した時、直ぐに浅木だとは気がつかなかった」
「そうそう、私は直ぐに三崎君だってわかったのに」
少しふざけて不貞腐れたように言ってみると、三崎君は焦ったように言い訳をする。
「いや、苗字変わっていたし、綺麗な人だなって……」
「ナニナニ、苗字変わったとかって、浅木ってば結婚したの?」
神田君が目を丸くしている。
「うん、一昨年ね。同じ大学の人と」
「苗字は?」
「浅木から菅生になったんだけど、やっと慣れて来た感じだったのにね」
と言ってから、しまったと口を押える。
まるで、菅生で無くなり浅木に戻るような言い方になってしまった。
でも、幸い誰も気付かなかったのか、ツッコミが入るような事はなかった。
「なぁーんだ。マジ結婚してんのか。研究職の俺には貴重な女子との出会いだったのに! 高校の頃も浅木の事、いいなって見てたんだぜ。ショック!」
なんて、神田君が騒ぐものだから、みんなの視線が一斉に私に集まった。神田君がそんな風に思っていてくれて居たなんて、どうしていいのやら……。
「高校の頃から、陰キャで地味だったのに、いいなって思ってくれて居たなんて、少しは自信が持てそう」
最近は、深紅のバラのような華やかさを持つ、野々宮果歩と陰キャで地味な自分を比べて落ち込むと言うのをくり返していた私。
神田君の言葉が、例えリップサービスだとしても、嬉しく感じられた。
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