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「美緒さんは、もっと自分に自信を持って良いと思うよ」
三崎君の言葉に、神田君がウンウンと首を大きく縦に振る。
「そうだよ。仕事もして、結婚もして、勝ち組に入る奴に陰キャはないだろう」
「勝ち組かどうかは良くわからないけど、自己肯定感を上げてくね」
確かに、バラの花が好きな人も居れば、引き立て役のカスミソウを好きな人も居る。例え、引き立て役であっても、その花にはその花の美しさがあるのだ。だから、いつまでも俯かないようにする。
「なあ、結婚生活を続ける上での秘訣ってある? 女性の視点から意見が欲しいんだ」
そう問いかけて来たのは、去年結婚したばかりの渡部君だ。
自分の結婚生活が今にも壊れそうなのに、秘訣なんて語れない。
「あはは、そんな秘訣があるなら、私こそ教えて欲しいぐらい」
「そこをなんとかっ!」
と、渡部君は両手を胸元でパチンと合わせ、なぜか私を拝み出した。
あまりに必死な様子に、夫婦ケンカの最中なのかなと邪推してしまう。
だから、自分の事を棚の高いところに押しやって、少しだけアドバイスを送る。
「んー、月並みだけど、パートナーに感謝を忘れないようにかな。些細な事でもありがとうって、感謝されたら嫌な気持ちしないもの。奥様に感謝の気持ちを伝えてあげてね」
「そうだな。何かやっても何も言われないと、やる気が失せるよな」
渡部君は良い助言もらえたとばかりに、目をキラキラさせている。
大した事は言っていないのに、ちょっと困る。
「うん、夫婦なんて、元は他人だったんだから、言葉にするって大事だよね」
私の言葉に、ウンウンとうなずく渡部君は、パートナーを大事にする良い旦那さんだと思う。
渡部君だったら、奥さんを裏切って泣かせたりはしないのだろう。
「独身の俺が言うのもヘンだけど、結婚ってお互いがお互いを支え合って行くものだと思うんだ。どちらか一方にばかり、負担になるようだと、続かないんじゃないかな」
「おっ、三崎の言う事にも一理あるな」
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